関東・首都圏 活動ブログ

全国の会員が日々の相談・検査・設計・研究などの活動から皆さまに役立つ事例、家づくりに関する地域の情報、社会情勢ニュースに対する専門家としての意見などを発信していきます。

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塀・擁壁 土地の所有者は責任を問われます

古くて背の高いブロック塀は倒壊の危険があります

昨日、大阪府の北部を震源とする震度6弱の地震が発生して4人の方が亡くなっています。

亡くなられた4人のうち、2名の方がブロック塀の下敷きになり亡くなられ、
1名の方は住居内の本棚が倒れ下敷きになり亡くなられました。

建物自体を耐震補強する事も重要ですが、より身近ですぐにでも始められる「防震」と称した地震対策を家づくり援護会では以前から提案してきました。
また自治会や地域のイベントなどでも「防震」の話をしたり、展示を行ってきています。

日々イエンゴでも4月23日のブログでは家具の固定について、5月15日のブログでは「おととしの熊本地震で倒れたブロック塀の下敷きになり死亡した男性の遺族と重傷を負った女性の方がブロック塀の施工者ではなく所有者を過失致死傷の容疑で告訴した。」というメディア記事の感想について書いています。




今回のブログでは、擁壁と地盤の崩落の例を挙げて中古の住宅や土地を購入しようとする土地の敷地内、または隣接する敷地に気になる擁壁やブロック塀がある場合と、購入する土地の状況をできる限り確認することをお勧めしたいということを書いています。



「日経ホームビルダー」の2018の1月号に「民家の盛り土崩落は自己責任か」という記事が載っていました。

2017年10月22日に関西圏を襲った台風21号により奈良県三郷町の近鉄生駒線沿いの高台にある住宅地の鉄筋コンクリートの*擁壁が、高さ約8m、幅約50mにわたって崩落したという記事でした。

*擁壁(ようへき):崖や盛り土の側面が崩れ落ちるのを防ぐために築く壁。(スーパー大辞林3.0より)


崩れた擁壁と土砂は16年前に開発会社が盛り土(もりど)工事を県に許可を出し行われた工事で造成後、開発会社が3回にわたり補修工事をしたが、この会社は倒産したとのことです。


この崩落事故は関西圏のテレビや新聞も大きく取り上げられ、一般人の関心が高まりその一般人の意見には住民の自己責任論が目についたそうです。

記事では、『確かに土地選びは自己責任だ。所有者としての管理責任も伴う。
宅造法16条には「宅地造成工事規制区域内の宅地所有者は、宅地を安全な状態に
維持するように努めなくてはならない」といった趣旨が記されています。
この現場は、宅地造成工事規制区域に指定されていたとはいえ、
この現場の居住者が盛り土の危険性をどれだけ認識していただろうか』と書いています。


千葉県の浦安市では、東日本大震災で液状化した住宅地の住民が
分譲住宅を販売した会社に損害賠償を求めて最高裁まで争ったが最終的には
住民が敗訴した、ということも有りました。


建物が建つ土地や、その土地に築かれた擁壁やコンクリートブロック塀などを購入したのも自己責任。購入後に安全性を維持するのも自己責任。
万一第三者に危害を加えてしまった場合、現状はそう判断されかねないということです。

新築や中古住宅を購入するときにその土地に気になる擁壁や塀が有るときや土地の性質は、建物だけの安全性の確認だけで無く、出来るだけ確認するほうがよいという事です。

家づくり援護会では新築住宅や中古住宅の購入診断という住宅を購入する方向けの検査があります。

購入診断は「目視」で行う検査です。
建物の外や中、床下や天井内、それと敷地内の擁壁や塀も「目視」で確認するようにしています。

検査するのは「目視」ですので表面に現れた兆候を検査する事になります。

気になる擁壁や塀がある場合で、擁壁の内部が盛り土になっているのか。
鉄筋が所定通り入っているのか。
など「目視」出来ないところと土地の性質などは売り主や
不動産業者に出来るだけ資料を集めてもらい検討することをお勧めいたします。

関東:今井 利一


敷地境界確認も重要

境界プレートが剥がれていてどこが境界かわからない

建売住宅や中古住宅の購入前のご相談を受けることがありますが、
皆さん建物のみについて気にして、境界点(線)に関してご確認されていない方がいらっしゃいます。
既存ある塀やフェンスが誰の所有なのかにも関わってきます。
境界の問題は、将来のトラブルにも関わってきます。

売買契約書には、次のように記載されていることが多いです。

(境界の明示及び実測図の作成)
第○条  
売主は、買主に本物件引渡しのときまでに、現地において隣地との境界を明示する。
2 売主は、その責任と負担において、隣地所有者等の立会を得て、測量士又は土地家屋調査士に標記の土地について実測図を作成させ、引渡しのときまでに買主に交付する。

この内容が記載あるなら、売主には境界を明示する義務があるわけですので、契約締結前にきちんと現地でどこが境界なのか説明を受け確認しましょう。

関東:石川 克茂


新たに始まる既存住宅建物現況調査とイエンゴ購入診断

宅地建物取引業法(宅建業法)の改正により、4月から既存住宅売買の際に、宅建業者は「既存住宅現況調査」(インスペクション)を行う業者のあっせんの可否を依頼者に書面で示すこととなりました。

また、契約前に買主に示す重要事項説明書に、インスペクションが行われているかどうか記載し、行われた場合はその結果を情報として説明することが定められました。

以前より家づくり援護会では「中古住宅購入診断」という検査メニューで、中古住宅を購入する方たちに向けて、安心して中古住宅を購入していただくための検査を各支部や首都圏でも多数依頼をいただき実施してまいりました。

それでは新たに4月から始まった「既存住宅現況調査」と家づくり援護会の「中古住宅購入診断」とでは何が違うのか? 気になる方もいらっしゃると思います。

上の図は国土交通省が去年、新聞紙上に建物現況調査の普及のために掲載した図です。

この図を見ると「既存住宅現況調査」(インスペクション)では、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の確認と記載されていますが、具体的な確認内容まではわかりません。

家づくり援護会の「中古住宅購入診断」は当会のウェブサイトに検査の内容が記載されていますので確認してみてください。 ↓ 中古住宅購入診断ページへリンク
http://www.iengo.ne.jp/side/j-kouneu/j-kouneu.htm

*家づくり援護会で「中古住宅購入診断」のご利用をお考えの方または家づくり援護会で「既存住宅現況調査」(インスペクション)を行いたい方は本部事務局までご連絡ください。

関東:今井 利一


リフォームでも設計と監理が重要:欠陥・トラブル防止策 その3

前回の続きです。

2017年11月某日
リフォーム工事中に雨漏りを起こして、
そのことで工事方法全般に疑問を持ったという趣旨の相談がありました。

現場に伺ってみると、様々な問題が見えてきました。
1、図面と違う施工を行っている。
2、耐震要素として不適切な部分を耐震壁として計算している。
3、耐震要素を新設した箇所に梁がない。
4、お客様が依頼した当初より「暖かい家にしたい」という要望に応えていない。
5、契約時に約束した工期では初めから無理があった。
6、工事内容を請け負った大工にまかせっきり。
7、設計者は想定で図面を書き、現場監督はその設計の妥当性を現場に来て確認していない。

この現場を請け負っているのは某大手ハウスメーカーのリフォーム部門です。

6、「大工にまかせっきり」について。
担当の営業や設計及び現場監督までもが現場をよく見て、その現場に適した最適な方法を提案していない、または提案できる土壌ではないといえるのかもしれません。

7、「縦割りの仕事(想定と確認)」について。
新築の場合は当然全てゼロから造るのですから、設計図は全て想定で書きます。
そして現場もゼロから造っていきますのでハウスメーカーが決めた仕様通りにことを進めることができます。しかし、リフォームの場合、建物がすでにあるわけです。
それを設計者が新築と同じように想定だけで書いて、現場監督が建物を確認もしなければ、
想定した内容と現場が違っていれば不具合が生じることは当然起きると思います。
 本来、リフォームの設計を行う場合、設計者が自ら現場を確認をして、その現場に適した設計を行い、現場が始まってからはその設計図通り現場が施工されているかをチェックする現場監理を行うというのが重要です。
ハウスメーカーは営業・設計・監督の業務が縦割りとなっています。
設計者が現場を確認して図面を書き、現場の状況を確認し、図面通り現場ができているか現場監理するということができない仕組みとなっています。

*業者を選ぶ前、新築やリフォームで何をしたいのかピックアップして優先順位をつけておきましょう。
また、業者に任せるだけでなくご自分が主体的に関わることが大事です。

*不安に思うことがある場合、不安な場合はどんな些細なことも
大きな問題になる前にイエンゴに相談して下さい。

関東:今井 利一


リフォームでも設計と監理が重要:欠陥・トラブル防止策 その2

前回の続きです。

2017年11月某日
リフォーム工事中に雨漏りを起こして、
そのことで工事方法全般に疑問を持ったという趣旨の相談がありました。

現場に伺ってみると、様々な問題が見えてきました。
1、図面と違う施工を行っている。
2、耐震要素として不適切な部分を耐震壁として計算している。
3、耐震要素を新設した箇所に梁がない。
4、お客様が依頼した当初より「暖かい家にしたい」という要望に応えていない。
5、契約時に約束した工期では初めから無理があった。
6、工事内容を請け負った大工にまかせっきり。
7、設計者は想定で図面を書き、現場監督はその設計の妥当性を現場に来て確認していない。

この現場を請け負っているのは某大手ハウスメーカーのリフォーム部門です。

4、「暖かい家にしたい」について。
図面と違う施工をして、防水まで完了しているバルコニーの下は部屋がありますが、
その部屋は当初の計画ではいじらないことになっていました。
バルコニーの下側ですしせっかくリフォームするのですから、屋根裏と同じように断熱材を入れるべきところですが、私が現場を確認すると断熱材が入っていませんでした。
ハウスメーカーの契約書・図面にはバルコニーの工事内容をお客様に説明する断面図が用意されていて、断熱材が施工するように記載されていたにもかかわらず、ハウスメーカーの営業の方は
「当社の規定では施工範囲外の箇所については基本的に既存のままとしています」との説明がありました。”お客様の要望よりも自社の規定を重視するのか”という印象です。
その他の部屋でもいじらない部屋の天井断熱材は昔のままの薄い断熱性の劣るもののままで、
断熱材を交換・追加するという提案がハウスメーカーからはありませんでしたので、
それも私が指摘して追加で入れました。
しかも当初の設計内容では今般新築住宅で使用している断熱材に比べて、
断熱性能の劣るものを使用する予定でしたが、「暖かい家にしたい」という要望をお聞きしたので、私が提案して断熱材のグレードを変更して施工しました。

5、「無理がある工期」について。
工期について現場での雨漏りがあったため数日現場が動いていなかったことと、
雨漏りの処理にかかる日数がプラスされるにしても、
工事が完了する日が契約した時の工期よりも2か月も先になりました。
お客様は安心できるものをより早くより安くを要望されるのが常です。
営業が仕事を取るために短い工期、要望があってもあえてお金のかかる工事の提案はしない、
ということにより契約通りの工期では無理があったり性能の良い断熱材を提案しなかったり、
ということが起きるものと思います。

次回に続きます。

関東:今井 利一