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「里山の小さな家」ある建築主からのレポート 報告者/井戸道也

13.春〜夏                             写真   図面 

1. 概要
(1) 地形
(2) 配置と間取り 
(3) こもる−ひらく 
(4) 室内環境

2. 気候

3.美濃の民家−起源と形成
(1) 配置と間取り 
(2) 構造 
(3)家の形成と暮らし

4.失われた民家
(1)生活の変化 
(2)悪くなった住宅

5.自分で設計する
(1)思い通りの家? 
(2)暮らしかたを構想する

6.要件を固める
(1)断熱が生命線 
(2)小さく 
(3)低く 
(4)陽を入れる、さえぎる 
(5)素材とデザイン 
(6)東海地震に備える

7.愛和登場
(1)相見積り 
(2)板頭社長 
(3)カネダイ 
(4)2つの実験

8.契約・着工・上棟

9.白川大工・今井さん

10.仕上げ

11.完成・見学会

12.冬
(1)背中があたたかい 
(2)結露ゼロ!

13.春〜夏
(1)春 
(2)夏

14.1年経過
(1)床材ラオス松 
(2)樋から雨漏り! 
(3)電気料金 
(4)ショック! 畳に青カビ

15.そのほか
(1)新築費用 
(2)優良工務店を探す 
(3)家相

16.終わりに


(1)春

 早春にサンシュユの古木とカツラの若木を買いました。サンシュユは彼岸桜より一足早く、渋い黄色の小さな花が葉に先立って樹木全体に咲き、春を告げてくれます。渋い風情が茶花としてもよろこばれ、古木は数が少なく、姿の佳い樹は値段も高いのですが思いきっておごりました。これは居間の南、家付きに植えて真っ先の春を楽しむことにしました。
 カツラはハート型の葉が風に揺れる風情がやさしく、真夏になっても葉色が濃くならないので、樹全体があかるく清涼感を評価。大きくなる木なので庭の真中に植えて緑陰を期待しました。
 どちらも落葉樹で、夏は陽射しをやわらげ、冬は日陰になりません。パッシブソーラーの1アイテムですが、サンシュユは渋い和風、カツラはカラッとあかるい洋風。それに古木と若木、雰囲気がぜんぜん違います。はたして調和するでしょうか。するわけないね。

 西の斜面に彼岸桜が咲き、続いてスモモの花が咲きました。
4月18日、ゴールデンウイークも近づき、朝夕の冷えもなくなったので基礎換気口を開放し、床下蓄熱暖房機の電源を切りました。
 若葉が萌え、ウグイスが鳴き、石付きのイワチドリが咲き、ササユリが花を開きました。たった2ヶ月のあいだにめまぐるしい変化、春は足早に過ぎました。
 愛和から6ヶ月点検の案内が来ました。床鳴りが3ヶ所と障子の建て付け不具合が1ヶ所出てきましたが、これは木が乾く過程で当然おきる現象。欠陥ではなく変化。もう少し待って出尽くしてから手直ししたほうが確実だし、そのほかにとりたてて不具合もないので6ヶ月点検は辞退しました。

(2)夏

 梅雨があけると待っていたようにセミが鳴き、庭のサルスベリが淡いピンクの花を揺らし、オニユリが咲きました。
2004年は例年より1週間ほど早く梅雨があけ、東京では7月20日に39.5℃という観測史上最高気温を記録しました。7月は全国各地で次々に38℃〜39℃を記録し、14の観測地点で史上最高気温を記録、さらに東京では連続真夏日が40日という新記録。
昨年の冷夏が嘘のような猛暑になりました。
 気象データから推定しても、こんな猛暑は何十年に一度ということでしょう。それとも地球温暖化の影響でこんな猛暑が恒常的になるのでしょうか。わたしはひょっとしたら後者ではないかと危惧しています。

 さあ、エアコンを取りやめた里山の家の夏はどうだったでしょうか。
 東京が史上最高気温を記録した4日前の7月16日、海の日を加えた3連休を利用して帰郷し、わたしは里山の小さな家にいました。お盆が近いので午前中屋敷まわりの草を刈り、午後は工事完成後ほったらかしになっていた庭を自分で少しずつ整備していたので、当日も玄関へのアプローチを「あられこぼし」で造ろうと庭師作業。黒い不整形な石を、適度の破調を演出しながら敷きこむ作業でしたが、異様な蒸し暑さで汗ばかり流れ、遅々としてはかどりません。

 午後2時40分。日向の外気温37℃、日陰33℃ 室内30℃。念のため断熱の無い座敷を測定すると33℃でした。
 日陰との差は3℃です。温度計で比べても、体感でも断熱の効果は顕著ですが、では涼しいかといえば蒸し暑さは否めません。
 昨年工事中の記録は8月10日、日向の外気温38℃のときでも室内は28℃でした。エアコン取りやめを決意した日です。
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 こんなはずがない。
 ロフトを調べると窓が閉まっていました。日中、1階の窓をあけて熱い空気を入れ、これを閉じ込めていたのです。ロフトの窓をあけると熱気が抜け、1時間後に2℃下がりました。

8月13日。
 朝から雲ひとつなく、真っ白い、まぶしい光がカーンと照りつける。
午後2時45分、日向の外気温38℃、室内27℃、ロフト28.5℃、座敷31℃。やはりロフトの窓を開放した効果が顕著です。加えて外は微風なのに南の窓から入った風がスピードをあげて北の窓へ抜け、その通り道に寝転んでいると温度計の値よりもはるかに涼しく感じます。子供のころに肌で感じた、あの茅葺屋根の家の涼しさです。
 気流はいちばん短いコースを選んで抜けます。これをショートサーキットといいますが、どの窓を開けるかで,気流の通り道やスピードが変ります。家の中のいちばん居心地のよい場所を風が流れるように,窓の開閉位置を調整するのもたのしみのひとつ。

 気象台による当日の美濃加茂市最高気温は35.2℃でした。里山地域はこれより2℃〜3℃低い32℃〜33℃と推定できます。断熱と外壁通気層の効果だけで、外気温より5℃前後も低い27℃ということは有り得ない。不思議ですね。
 どうやら深夜から朝にかけて冷えた空気が躯体で維持されていることに加え,床下の空気が地熱で冷やされて日陰よりも涼しい室温を実現しているようです。まさに地熱の効果です。基礎通気口から入った空気が,床下を通って押入れの下に設けた開口部から室内へ入ってきます。手をかざすと涼しい風。

 こんな記録的な猛暑でも,計画を綿密にねり,条件をひとつもおろそかにしないように整備し、丁寧に施工すれば,断熱と地熱と外壁通気の相乗効果はエアコンに匹敵することが実証できました。
なお,暑い午後は1階の窓を閉めて熱気を入れないほうがよいのですが、夏は窓を開けて風を感じたほうが気分的にも涼しく、こうなると気温の問題ではなく気分の問題。

 これを書いているとき、NHKテレビである大学と住宅メーカーの共同研究による実験住宅のレポートを放映していました。屋根と壁面に親水加工をほどこし、少量の水を薄い膜状にして流下させることで気化熱を奪い住宅を冷却しようとするものです。結果は、室温が外気温より2℃低いとのことでした。
 目的は省エネとヒートアイランド抑止ですが、2℃程度の効果なら、なにもこんな装置まで作らなくても、もっとシンプルな「里山の小さな家」方式のほうが合理的でコストも安く、効果も優れていると思いました。

 これは考えかたですが、盛夏は長くても1ヶ月。田舎は午前中まあまあ涼しく、午後の4時間前後がきびしい。夕方には山風が吹いて急に涼しくなり、夜明けは肌寒いくらいまで冷えてきます。
 夏の午後、昼寝をしたりゴロゴロと怠けてやりすごすのも、変な安心があってなかなか味わい深いものです。
 体感は個体差もあります。かならずしも○○℃以下でならなくてはということもありません。これくらいなら我慢の範囲といっておきましょう。
で、この記録的な猛暑もエアコンなしで乗りきりました。

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※実際の書籍の内容とは異なる場合があります。

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