関東・首都圏 活動ブログ

全国の会員が日々の相談・検査・設計・研究などの活動から皆さまに役立つ事例、家づくりに関する地域の情報、社会情勢ニュースに対する専門家としての意見などを発信していきます。

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中古住宅購入診断の実例

家づくり援護会が中古住宅購入診断を実施してから10年以上の時が経ちます。
比較的初期の中古住宅購入診断の実例を掲載します。

この建物は2004年6月に神奈川県愛甲郡で中古住宅購入診断を実施、築22年の木造2階建住宅。

①北側と東側の基礎の換気口(床下の通気を確保するため)の角に、 0.8mmのクラック(ヒビ)が入っていました。

1mmにも満たない0.8mmのひび割れなど問題ではないと思われるかもしれませんが、参考として平成12年に施行された品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)の告示では、住宅の紛争処理の参考となるべき技術的基準として、「住宅の基礎で構造材による仕上げの場合、または仕上材と構造材にまたがった幅0.5mm以上のヒビ割れは瑕疵(かし)が存在する可能性が高い」とされています。

ただし、品確法が施行されてから適用される判断ではあるし、建物によって個別の要件があり、どの建物も一様にヒビ割れが0.5mm以上の場合、瑕疵が存在するとは言えませんが、0.8mmのヒビ割れが一般的にどう解釈しているのかはご理解いただけたと思います。

検査した2004年当時ですでに築22年たっている住宅であり、このように床下換気口周りにヒビが入っているのは、基礎に鉄筋が入っていない可能性が高いのです。


②床下換気口の不足:
基礎の南面にはサンルームを増築してあるため換気口が塞がれており、西面の換気口が不足しているため、床下がカビ臭く、湿気も多かったです。また、1階床裏の断熱材は設置されていない状態でした。


床下の換気口は建築基準法では、5mに1か所かつ300平方センチメートル以上必要となっていますが、中古住宅では確保できていない建物は意外と多いのです。

また、今回の建物のように、増築時に換気口をつぶしてしまっている例をよく見かけます。
この建物はもともと換気口が不足しているところにきて、南側にサンルームを増築していたため、通気が十分ではなく、床下がかび臭く、湿気もこもっていました。

この建物の建設当時(昭和57年)の住宅金融公庫(昔は割と住宅を建てる多くの人が住宅金融公庫の融資を受けていた)の仕様書を見てみると、公庫の融資を受けていた建物であっても、断熱化の割増融資を受けなければ、公庫の断熱化の仕様に適合させる必要はなかったようで、1階床の断熱材が無い住宅は結構多かったものと思われます。

中古住宅を購入する場合は、床下の換気口や小屋裏の換気口の数も大事な確認ポイントです。

関東:今井 利一


新たに始まる既存住宅建物現況調査とイエンゴ購入診断

宅地建物取引業法(宅建業法)の改正により、4月から既存住宅売買の際に、宅建業者は「既存住宅現況調査」(インスペクション)を行う業者のあっせんの可否を依頼者に書面で示すこととなりました。

また、契約前に買主に示す重要事項説明書に、インスペクションが行われているかどうか記載し、行われた場合はその結果を情報として説明することが定められました。

以前より家づくり援護会では「中古住宅購入診断」という検査メニューで、中古住宅を購入する方たちに向けて、安心して中古住宅を購入していただくための検査を各支部や首都圏でも多数依頼をいただき実施してまいりました。

それでは新たに4月から始まった「既存住宅現況調査」と家づくり援護会の「中古住宅購入診断」とでは何が違うのか? 気になる方もいらっしゃると思います。

上の図は国土交通省が去年、新聞紙上に建物現況調査の普及のために掲載した図です。

この図を見ると「既存住宅現況調査」(インスペクション)では、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の確認と記載されていますが、具体的な確認内容まではわかりません。

家づくり援護会の「中古住宅購入診断」は当会のウェブサイトに検査の内容が記載されていますので確認してみてください。 ↓ 中古住宅購入診断ページへリンク
http://www.iengo.ne.jp/side/j-kouneu/j-kouneu.htm

*家づくり援護会で「中古住宅購入診断」のご利用をお考えの方または家づくり援護会で「既存住宅現況調査」(インスペクション)を行いたい方は本部事務局までご連絡ください。

関東:今井 利一


リフォームでも設計と監理が重要:欠陥・トラブル防止策 その3

前回の続きです。

2017年11月某日
リフォーム工事中に雨漏りを起こして、
そのことで工事方法全般に疑問を持ったという趣旨の相談がありました。

現場に伺ってみると、様々な問題が見えてきました。
1、図面と違う施工を行っている。
2、耐震要素として不適切な部分を耐震壁として計算している。
3、耐震要素を新設した箇所に梁がない。
4、お客様が依頼した当初より「暖かい家にしたい」という要望に応えていない。
5、契約時に約束した工期では初めから無理があった。
6、工事内容を請け負った大工にまかせっきり。
7、設計者は想定で図面を書き、現場監督はその設計の妥当性を現場に来て確認していない。

この現場を請け負っているのは某大手ハウスメーカーのリフォーム部門です。

6、「大工にまかせっきり」について。
担当の営業や設計及び現場監督までもが現場をよく見て、その現場に適した最適な方法を提案していない、または提案できる土壌ではないといえるのかもしれません。

7、「縦割りの仕事(想定と確認)」について。
新築の場合は当然全てゼロから造るのですから、設計図は全て想定で書きます。
そして現場もゼロから造っていきますのでハウスメーカーが決めた仕様通りにことを進めることができます。しかし、リフォームの場合、建物がすでにあるわけです。
それを設計者が新築と同じように想定だけで書いて、現場監督が建物を確認もしなければ、
想定した内容と現場が違っていれば不具合が生じることは当然起きると思います。
 本来、リフォームの設計を行う場合、設計者が自ら現場を確認をして、その現場に適した設計を行い、現場が始まってからはその設計図通り現場が施工されているかをチェックする現場監理を行うというのが重要です。
ハウスメーカーは営業・設計・監督の業務が縦割りとなっています。
設計者が現場を確認して図面を書き、現場の状況を確認し、図面通り現場ができているか現場監理するということができない仕組みとなっています。

*業者を選ぶ前、新築やリフォームで何をしたいのかピックアップして優先順位をつけておきましょう。
また、業者に任せるだけでなくご自分が主体的に関わることが大事です。

*不安に思うことがある場合、不安な場合はどんな些細なことも
大きな問題になる前にイエンゴに相談して下さい。

関東:今井 利一


リフォームでも設計と監理が重要:欠陥・トラブル防止策 その2

前回の続きです。

2017年11月某日
リフォーム工事中に雨漏りを起こして、
そのことで工事方法全般に疑問を持ったという趣旨の相談がありました。

現場に伺ってみると、様々な問題が見えてきました。
1、図面と違う施工を行っている。
2、耐震要素として不適切な部分を耐震壁として計算している。
3、耐震要素を新設した箇所に梁がない。
4、お客様が依頼した当初より「暖かい家にしたい」という要望に応えていない。
5、契約時に約束した工期では初めから無理があった。
6、工事内容を請け負った大工にまかせっきり。
7、設計者は想定で図面を書き、現場監督はその設計の妥当性を現場に来て確認していない。

この現場を請け負っているのは某大手ハウスメーカーのリフォーム部門です。

4、「暖かい家にしたい」について。
図面と違う施工をして、防水まで完了しているバルコニーの下は部屋がありますが、
その部屋は当初の計画ではいじらないことになっていました。
バルコニーの下側ですしせっかくリフォームするのですから、屋根裏と同じように断熱材を入れるべきところですが、私が現場を確認すると断熱材が入っていませんでした。
ハウスメーカーの契約書・図面にはバルコニーの工事内容をお客様に説明する断面図が用意されていて、断熱材が施工するように記載されていたにもかかわらず、ハウスメーカーの営業の方は
「当社の規定では施工範囲外の箇所については基本的に既存のままとしています」との説明がありました。”お客様の要望よりも自社の規定を重視するのか”という印象です。
その他の部屋でもいじらない部屋の天井断熱材は昔のままの薄い断熱性の劣るもののままで、
断熱材を交換・追加するという提案がハウスメーカーからはありませんでしたので、
それも私が指摘して追加で入れました。
しかも当初の設計内容では今般新築住宅で使用している断熱材に比べて、
断熱性能の劣るものを使用する予定でしたが、「暖かい家にしたい」という要望をお聞きしたので、私が提案して断熱材のグレードを変更して施工しました。

5、「無理がある工期」について。
工期について現場での雨漏りがあったため数日現場が動いていなかったことと、
雨漏りの処理にかかる日数がプラスされるにしても、
工事が完了する日が契約した時の工期よりも2か月も先になりました。
お客様は安心できるものをより早くより安くを要望されるのが常です。
営業が仕事を取るために短い工期、要望があってもあえてお金のかかる工事の提案はしない、
ということにより契約通りの工期では無理があったり性能の良い断熱材を提案しなかったり、
ということが起きるものと思います。

次回に続きます。

関東:今井 利一


リフォームでも設計と監理が重要:欠陥・トラブル防止策

2017年11月某日
リフォーム工事中に雨漏りを起こして、
そのことで工事方法全般に疑問を持ったという趣旨の相談がありました。

現場に伺ってみると、様々な問題が見えてきました。
1、図面と違う施工を行っている。
2、耐震要素として不適切な部分を耐震壁として計算している。
3、耐震要素を新設した箇所に梁がない。
4、お客様が依頼した当初より「暖かい家にしたい」という要望に応えていない。
5、契約時に約束した工期では初めから無理があった。
6、工事内容を請け負った大工にまかせっきり。
7、設計者は想定で図面を書き、現場監督はその設計の妥当性を現場に来て確認していない。

この現場を請け負っているのは某大手ハウスメーカーのリフォーム部門です。

1、「図面と違う施工」について。
相談者が第一声で私に現場の状況を伝えたのが「図面と違う工事を行っている」
ということでしたが、雨漏りが発生した段階で初めて気が付いたということでした。
現場はバルコニーが完成して防水も終わっている段階でのことですが、
どうやらそれまで営業や現場監督が確認もせず現場を進めてきたようです。

2、「不適切な耐震要素」について。
私が現場に伺って確認し、指摘してハウスメーカーも「不適切だった」と初めて認識し、
その後何度かダメ出しのため数回にわたり耐震診断の計画をし直しています。
リフォームの場合、工事にかかわる設計者や現場監督がどこまで建物を見ているかにより、
設計内容も施工の良し悪しも左右されることになります。

3、「梁が無い」について。
これも私が現場に伺ったときに、耐震計画で耐震壁を新たに入れた部分の
上部に梁が無いことを指摘して初めて気が付き、後日梁を入れました。
梁が入っていないところに耐力壁を設けても、耐力壁として効果が得られません。
無駄な工事となってしまいます。とても残念なことです。

4以降は次回に続きます。

関東:今井 利一