関東・首都圏 活動ブログ

全国の会員が日々の相談・検査・設計・研究などの活動から皆さまに役立つ事例、家づくりに関する地域の情報、社会情勢ニュースに対する専門家としての意見などを発信していきます。

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住宅瑕疵保険の検査は欠陥防止に役立の?

瑕疵保険の検査と不具合の防止について書いてみました。

ここで紹介するのは国土交通省の方々が執筆された、住宅の瑕疵保険(瑕疵担保責任保険)が始まる前に法律(瑕疵担保履行法)の趣旨を理解してもらうために書かれた11年前の本ですが、保険の検査(住宅瑕疵保険の検査)の目的についても書かれていますのでご紹介します。
その本はQ&A方式で書かれていて、「図解でわかる 住宅 瑕疵担保履行法」(株)ぎょうせい発行 という本です。

ここから-----------------------------
Q92
保険法人の検査に合格していると言うことは、
検査をした保険法人が瑕疵がないことを証明したことになるのですか。


住宅は他の工業製品と異なり・・・(中略)
現場検査は、指定保険法人が保険の引受をするにあたって、
異常なリスク集積や巨大リスクの発生、*モラルハザードの防止等を図るなど、
一定のリスク管理のためにおこなうものです。あくまで、指定保険法人が
自らの利益のために実施するものと考えてください。
したがって、指定保険法人が現場の検査をしたことをもって、指定保険法人が
瑕疵がないことの証明や保証をするものではありません。

*モラルハザード(三省堂 スーパー大辞林3.0より):保険に加入したことによって、加入者が果たすべき注意を怠ったり、故意に事故を起こしたりするような危険。道徳的危険。



住宅の瑕疵保険の検査は、住宅の瑕疵がないことを保証するという検査ではないのです。 
住宅の瑕疵保険の検査ではモラルハザードの防止の目的からだと思いますが、申請内容の通り施工しているかを施工者自らが確認してもらうようにしています。

不具合が起きる原因の一つに、間違った認識、うっかり忘れ、があります。 住宅の瑕疵保険の検査では、施工者自ら現場の内容を確認したものを検査員がチェックするという検査です。そのような検査では現場での欠陥防止に全く役に立たないということではないでしょうが、認識不足やうっかり忘れなどを防止することはできません。

現場での不具合を防止するのは設計の段階から工夫が必要ですし、施工段階での*現場監理が重要になってきます。施工段階で現場監理の機能が発揮できないような懸念のある業者の場合は、専門家のアドバイスを借りながらご自分が建築中の現場を確認するという事もできると思います。
そのような不安のある業者さんに住宅の建築を頼む場合は、
家づくり援護会の欠陥住宅予防検査の利用を考えてみてはいかがでしょうか。

また設計・監理も家づくり援護会で行っています。

*現場監理(者):その人の責任で設計者が書いた設計図通りに工事が実施されているかいないかを確認する(者)。

関東:今井 利一


木造住宅の安全性確保にも構造設計時の判断が重要

木造住宅の構造設計と言えば地震対策が思い浮かぶと思います。
地震対策も当然重要ですが、それだけではないのです。

建物に加わる力には種類がある!

建物には”常に加わる力”と”瞬間的に加わる力”があります。

例えば地震は瞬間的に加わる力ですが、それ以外の瞬間的に加わる力として、
暴風(台風)の力があります。
台風は日本列島の太平洋側の広い地域で毎年のように襲来しますね。
それと、温暖な地域や関東以西の太平洋側では、たまに降る雪も瞬間的に加わる力になります。

建物に常に加わる力とはどのような力でしょうか。
まずは建物の自重です。
それと、建物を利用するときに建物に載る人や物などの力です。
また、雪が日常的に降る地域では雪も瞬間的に加わる力ではなく、日常的に加わる力となります。

瞬間的に加わる力の地震や暴風(台風)が来た時も、
建物の自重や中に人がいて生活をしていますので、
建物の安全性は建物に常に加わる力と
瞬間的に加わる力の合計で設計しなければなりません。

建物に加わる力には地域差がある!

雪が日常的に降る地域では地震や暴風(台風)が起きたときに
雪が積もっている可能性があります。
しかし、1年のうちに雪が常時積もっている期間は地域によって違うでしょうが、
建築では約1/3の35%の雪の力を地震や暴風(台風)が起きたときに
構造の設計時に加えるようにしています。

建築では暴風、積雪、地震には地域差がある事になっていますが、
暴風と積雪についてはしっくりきますが、地震には地域係数という物があり、
2年前に発生した熊本では、係数が値が低かった地域でも被害が出ていますので、
私自身は、この係数をそのまま当てはめるのは良くないと思っています。
この係数は建築基準法の施行で決まっています。

地震に関して言えば日本全国どこでも起こるのではないかと
感じていますが、一度決めた法律はなかなか改めることは出来と思います。

安全側の設計は設計者の判断で行える!

住宅を安全側で設計するのは全く問題がありませんので、
地域係数により地震力を割り引いて計算しないという方針も設計者にはあると思います。

関東:今井 利一


リフォームでも設計と監理が重要:欠陥・トラブル防止策 その3

前回の続きです。

2017年11月某日
リフォーム工事中に雨漏りを起こして、
そのことで工事方法全般に疑問を持ったという趣旨の相談がありました。

現場に伺ってみると、様々な問題が見えてきました。
1、図面と違う施工を行っている。
2、耐震要素として不適切な部分を耐震壁として計算している。
3、耐震要素を新設した箇所に梁がない。
4、お客様が依頼した当初より「暖かい家にしたい」という要望に応えていない。
5、契約時に約束した工期では初めから無理があった。
6、工事内容を請け負った大工にまかせっきり。
7、設計者は想定で図面を書き、現場監督はその設計の妥当性を現場に来て確認していない。

この現場を請け負っているのは某大手ハウスメーカーのリフォーム部門です。

6、「大工にまかせっきり」について。
担当の営業や設計及び現場監督までもが現場をよく見て、その現場に適した最適な方法を提案していない、または提案できる土壌ではないといえるのかもしれません。

7、「縦割りの仕事(想定と確認)」について。
新築の場合は当然全てゼロから造るのですから、設計図は全て想定で書きます。
そして現場もゼロから造っていきますのでハウスメーカーが決めた仕様通りにことを進めることができます。しかし、リフォームの場合、建物がすでにあるわけです。
それを設計者が新築と同じように想定だけで書いて、現場監督が建物を確認もしなければ、
想定した内容と現場が違っていれば不具合が生じることは当然起きると思います。
 本来、リフォームの設計を行う場合、設計者が自ら現場を確認をして、その現場に適した設計を行い、現場が始まってからはその設計図通り現場が施工されているかをチェックする現場監理を行うというのが重要です。
ハウスメーカーは営業・設計・監督の業務が縦割りとなっています。
設計者が現場を確認して図面を書き、現場の状況を確認し、図面通り現場ができているか現場監理するということができない仕組みとなっています。

*業者を選ぶ前、新築やリフォームで何をしたいのかピックアップして優先順位をつけておきましょう。
また、業者に任せるだけでなくご自分が主体的に関わることが大事です。

*不安に思うことがある場合、不安な場合はどんな些細なことも
大きな問題になる前にイエンゴに相談して下さい。

関東:今井 利一


リフォームでも設計と監理が重要:欠陥・トラブル防止策 その2

前回の続きです。

2017年11月某日
リフォーム工事中に雨漏りを起こして、
そのことで工事方法全般に疑問を持ったという趣旨の相談がありました。

現場に伺ってみると、様々な問題が見えてきました。
1、図面と違う施工を行っている。
2、耐震要素として不適切な部分を耐震壁として計算している。
3、耐震要素を新設した箇所に梁がない。
4、お客様が依頼した当初より「暖かい家にしたい」という要望に応えていない。
5、契約時に約束した工期では初めから無理があった。
6、工事内容を請け負った大工にまかせっきり。
7、設計者は想定で図面を書き、現場監督はその設計の妥当性を現場に来て確認していない。

この現場を請け負っているのは某大手ハウスメーカーのリフォーム部門です。

4、「暖かい家にしたい」について。
図面と違う施工をして、防水まで完了しているバルコニーの下は部屋がありますが、
その部屋は当初の計画ではいじらないことになっていました。
バルコニーの下側ですしせっかくリフォームするのですから、屋根裏と同じように断熱材を入れるべきところですが、私が現場を確認すると断熱材が入っていませんでした。
ハウスメーカーの契約書・図面にはバルコニーの工事内容をお客様に説明する断面図が用意されていて、断熱材が施工するように記載されていたにもかかわらず、ハウスメーカーの営業の方は
「当社の規定では施工範囲外の箇所については基本的に既存のままとしています」との説明がありました。”お客様の要望よりも自社の規定を重視するのか”という印象です。
その他の部屋でもいじらない部屋の天井断熱材は昔のままの薄い断熱性の劣るもののままで、
断熱材を交換・追加するという提案がハウスメーカーからはありませんでしたので、
それも私が指摘して追加で入れました。
しかも当初の設計内容では今般新築住宅で使用している断熱材に比べて、
断熱性能の劣るものを使用する予定でしたが、「暖かい家にしたい」という要望をお聞きしたので、私が提案して断熱材のグレードを変更して施工しました。

5、「無理がある工期」について。
工期について現場での雨漏りがあったため数日現場が動いていなかったことと、
雨漏りの処理にかかる日数がプラスされるにしても、
工事が完了する日が契約した時の工期よりも2か月も先になりました。
お客様は安心できるものをより早くより安くを要望されるのが常です。
営業が仕事を取るために短い工期、要望があってもあえてお金のかかる工事の提案はしない、
ということにより契約通りの工期では無理があったり性能の良い断熱材を提案しなかったり、
ということが起きるものと思います。

次回に続きます。

関東:今井 利一


リフォームでも設計と監理が重要:欠陥・トラブル防止策

2017年11月某日
リフォーム工事中に雨漏りを起こして、
そのことで工事方法全般に疑問を持ったという趣旨の相談がありました。

現場に伺ってみると、様々な問題が見えてきました。
1、図面と違う施工を行っている。
2、耐震要素として不適切な部分を耐震壁として計算している。
3、耐震要素を新設した箇所に梁がない。
4、お客様が依頼した当初より「暖かい家にしたい」という要望に応えていない。
5、契約時に約束した工期では初めから無理があった。
6、工事内容を請け負った大工にまかせっきり。
7、設計者は想定で図面を書き、現場監督はその設計の妥当性を現場に来て確認していない。

この現場を請け負っているのは某大手ハウスメーカーのリフォーム部門です。

1、「図面と違う施工」について。
相談者が第一声で私に現場の状況を伝えたのが「図面と違う工事を行っている」
ということでしたが、雨漏りが発生した段階で初めて気が付いたということでした。
現場はバルコニーが完成して防水も終わっている段階でのことですが、
どうやらそれまで営業や現場監督が確認もせず現場を進めてきたようです。

2、「不適切な耐震要素」について。
私が現場に伺って確認し、指摘してハウスメーカーも「不適切だった」と初めて認識し、
その後何度かダメ出しのため数回にわたり耐震診断の計画をし直しています。
リフォームの場合、工事にかかわる設計者や現場監督がどこまで建物を見ているかにより、
設計内容も施工の良し悪しも左右されることになります。

3、「梁が無い」について。
これも私が現場に伺ったときに、耐震計画で耐震壁を新たに入れた部分の
上部に梁が無いことを指摘して初めて気が付き、後日梁を入れました。
梁が入っていないところに耐力壁を設けても、耐力壁として効果が得られません。
無駄な工事となってしまいます。とても残念なことです。

4以降は次回に続きます。

関東:今井 利一