関東・首都圏 活動ブログ

全国の会員が日々の相談・検査・設計・研究などの活動から皆さまに役立つ事例、家づくりに関する地域の情報、社会情勢ニュースに対する専門家としての意見などを発信していきます。

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欠陥住宅予防検査で最も多い指摘基礎のカブリ寸法不足

木造の基礎は鉄筋コンクリートでできている。

そりゃ知っています。と言われそうですが。

実際に建築現場で、その木造を含めた住宅の基礎を長持ちさせることに
どれだけ注意が向けられているのか、甚だ疑問が残ります。

プレハブでも上部は工場で生産されていて
安定した品質が確保できるのかもしれませんが、
基礎で使う鉄筋の一部は加工済みのものを
現場に搬入している場合もありますが、
加工済みの鉄筋だからといって
そのまま現場に設置して、それで終わり
とはならないのです。
全ての基礎の鉄筋は現場でつなぎ合わせています。

また、アンカーボルトの結束や、
設備用の配管の開口や型枠も
現場で施工して、コンクリートを
流し込んでいます。


家づくり援護会では、建て主からの依頼で
工事中の検査である「欠陥住宅予防検査」を
様々な工法で実施をさせていただいてきました。


その「欠陥住宅予防検査」を実施した中で、
工法を問わず最も多い指摘が、

基礎の鉄筋のカブリ寸法不足です。

*カブリ寸法は上図を参照してください。
(図:木造住宅 工事チェックハンドブック 家づく援護会 編より)


このカブリ寸法は
建築基準法の告示にも最小のカブリ寸法というものが
記載されています。


では、なぜ、そのカブリ寸法を確保することが必要なのか?
法律に書かれているから?
それもそうですが、建物の耐久性にかかわるからです。

鉄筋コンクリートの鉄筋はコンクリートが
保護しているから錆びずにいられます。

そのコンクリートで鉄筋を保護している厚さが
不足していては鉄筋が錆びて耐久性が劣ってしまいます。

法律に書かれているのに守れていないのか?
と、疑問に思われるかもしれませんが、
実際の現場は多くの鉄筋と型枠や
設備配管用の開口があり、
通常の管理では全てを見ていないからなのです。


また、
コンクリートはご存知の通り
固まる前はドロドロしたものですので
通常は基礎のベースと呼ばれる部分と
ベースの上に木造の場合土台が乗る
基礎の立ち上がりは別々に
2度に分けれコンクリートを打ちます。


木造の住宅の検査を例にとれば
性能表示の現場検査(建設評価)や
確認申請の中間検査、瑕疵保険の検査でも
基礎の配筋が完了した段階で検査を行っていますが
基礎の立ち上がりに関しては検査をしていません。


家づく援護会の「欠陥住宅予防検査」の場合、
基礎の施工中の検査は「基礎配筋完了時の検査」と
1回目のコンクリート打設後、型枠やアンカーボルトなどが終了して
2回目のコンクリートを打設する前の「基礎立ち上がりの検査」
の2回の検査を実施しています。

多くの検査機関では実施されていませんが、
何故基礎の2回目の検査が必要かといえば、
1回目のコンクリートの打設が終わり
コンクリートが硬化しなければ立ち上がりの施工はできませんので、
その施工段階のチェックも必要であるために実施しています。


家づく援護会では様々は工法で建てられた住宅の検査を承ってきました。

当会のホームページでは在来工法と枠組壁工法の2種類の
検査の概要が記載されていますが、
それ以外の工法の検査につきましても承っていますので、
詳しくは当会事務局までお問い合わせください。

関東:今井 利一


大地震で危険物となるコンクリートブロック塀

熊本地震で倒壊したコンクリートブロック塀の下敷きになり死亡した男性の遺族と重傷を負った被害者の女性方が、ブロック塀の所有者を過失致死の容疑で告訴した、という記事を見た。

訴えられたのが被害をもたらしたコンクリートブロック塀を施工した業者ではなく、ブロック塀の所有者であるようだ。

このブロック塀の所有者は、ブロック塀の倒壊の危険性を認識していなく、倒壊により死傷者が出たのは、大災害による事故でという認識だったようだ。

でもそれが一般的な人の感覚なのではないかと思う。

我々建築関係者はコンクリートブロック塀の危険性を判断できるが、一般の方ではブロック塀の安全性まではわからない場合もあると思う。

実際に、大きな地震が発生するたびに、コンクリートブロック塀の倒壊による死傷者が発生している。
最初にブロック塀倒壊が話題になったのは、1962年(昭和37年)の宮城県北部地震が最初らしい。
特に、1978年(昭和53年)の宮城県沖地震では、コンクリートブロックの倒壊で10名の方が亡くなっている。

ブロック塀の施工方法は1971年(昭和46年)に建築基準法という法律で規定が設けられた。
それ以後のコンクリートブロック塀の場合、 建築基準法の違反の疑いも加わる。

コンクリートブロック塀は地震だけでなく台風などでも被害が出ているらしい。
ご自宅にブロック塀があるという方は、 安全性を確認してみた方が良いと思う。

安全性が疑わしい場合や 心配な場合、お近くに相談できる専門家がいない場合などは、家づくり援護会に相談してください。

関東:今井 利一


イエンゴでの住宅設計と現場監理(伊豆)

イエンゴでの設計と現場監理を経て完成した建物

イエンゴで設計・監理をして昨年引き渡した伊豆の住宅です。

建て主の方との接点は、「購入したい土地が伊豆にあるのだが、どのくらいの家が建てられるのか?」という相談を承ったのが始まりで、イエンゴで設計・監理するようになりました。

建て主の方は当時横浜在住で居住していた家はバブルの時代に購入した住宅で、「いくつか不満点があり大きさにも満足していないので、リタイア後に今よりも広い家でのんびりとしたところで過ごしたい」とのことで伊豆に家を建てることにしたそうです。

イエンゴに設計・監理を依頼される方のなかには、居住地から距離がある方が何人かいらっしゃいます。それは自分で建築途中に遠隔地にある自宅の工事を定期的に確認するのは不可能だし、現場監理をしっかりしてくれ、全国に建築士会員がいるイエンゴに頼むのがベストと考えてのことかもしれません。

関東:今井 利一


これまでの国の地震対策は…

出典:家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック 平成27年度版 東京消防庁

これまでの国の地震対策の特徴は建物の耐震強化を図ることで倒壊しない家に改修し家を守ろうというものでした。しかし実際に耐震改修工事を実施した住宅は、持家住宅数の4%程度だそうです。なぜ一般住宅の耐震化工事が進まないのか。一番の理由は多額の費用が掛かるためのようです。
数十万円から数百万掛かることありますし、当会で開催している「地震に備える集い」に参加者からの声では、「正直なところ、いつ来るかわからないものにお金を掛けられない」というのが現状のようです。
とはいえ、今回の地震でとりあえず建物は大丈夫だったとしても、上表のとおり、家具等の転倒は心配なわけです。経済負担が軽く誰もが採用できるわが家の地震対策として、家づくり援護会がお薦めするのが「防震」対策です。
家具ごとの危険度を判定し、どの家具を固定すべきか、効果的な家具固定方法は何かを決め、併せて安全な避難経路をどこにするか判定する対策です。

関東:石川 克茂


中古住宅購入診断の実例

家づくり援護会が中古住宅購入診断を実施してから10年以上の時が経ちます。
比較的初期の中古住宅購入診断の実例を掲載します。

この建物は2004年6月に神奈川県愛甲郡で中古住宅購入診断を実施、築22年の木造2階建住宅。

①北側と東側の基礎の換気口(床下の通気を確保するため)の角に、 0.8mmのクラック(ヒビ)が入っていました。

1mmにも満たない0.8mmのひび割れなど問題ではないと思われるかもしれませんが、参考として平成12年に施行された品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)の告示では、住宅の紛争処理の参考となるべき技術的基準として、「住宅の基礎で構造材による仕上げの場合、または仕上材と構造材にまたがった幅0.5mm以上のヒビ割れは瑕疵(かし)が存在する可能性が高い」とされています。

ただし、品確法が施行されてから適用される判断ではあるし、建物によって個別の要件があり、どの建物も一様にヒビ割れが0.5mm以上の場合、瑕疵が存在するとは言えませんが、0.8mmのヒビ割れが一般的にどう解釈しているのかはご理解いただけたと思います。

検査した2004年当時ですでに築22年たっている住宅であり、このように床下換気口周りにヒビが入っているのは、基礎に鉄筋が入っていない可能性が高いのです。


②床下換気口の不足:
基礎の南面にはサンルームを増築してあるため換気口が塞がれており、西面の換気口が不足しているため、床下がカビ臭く、湿気も多かったです。また、1階床裏の断熱材は設置されていない状態でした。


床下の換気口は建築基準法では、5mに1か所かつ300平方センチメートル以上必要となっていますが、中古住宅では確保できていない建物は意外と多いのです。

また、今回の建物のように、増築時に換気口をつぶしてしまっている例をよく見かけます。
この建物はもともと換気口が不足しているところにきて、南側にサンルームを増築していたため、通気が十分ではなく、床下がかび臭く、湿気もこもっていました。

この建物の建設当時(昭和57年)の住宅金融公庫(昔は割と住宅を建てる多くの人が住宅金融公庫の融資を受けていた)の仕様書を見てみると、公庫の融資を受けていた建物であっても、断熱化の割増融資を受けなければ、公庫の断熱化の仕様に適合させる必要はなかったようで、1階床の断熱材が無い住宅は結構多かったものと思われます。

中古住宅を購入する場合は、床下の換気口や小屋裏の換気口の数も大事な確認ポイントです。

関東:今井 利一