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 家を建てる前に読む本 家づくり援護会[編]          もくじ第1章第2章第3章第4章第5章第6章第7章

第1章 家づくりのトラブルを防ぐ A

第1章 家づくりのトラブルを防ぐ

相談事例から−よくあるトラブルの例

欠陥住宅の悲劇
欠陥を隠す家づくり
欠陥住宅が生まれるメカニズム
施工ミスはどうして起こる?
あいまいな管理責任
現場責任者の不在

ハンコを押す前に=契約トラブルを防ぐ
建築条件付土地売買のケース
契約締結と解除の問題
契約手付金の問題

見積チェックのポイント
標準的な積算法
見積チェックの仕方
サービスも経費のうち
相見積もりは慎重に
予算は余裕を持って立てよう
登記および税金の予備知識

安心を担保する保険制度
家づくりにともなうさまざまなリスク
近隣への被害
入居後に気づくミス
工事現場が放火されたとき
施工業者倒産のケーススタディ

人任せは後悔のもと
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欠陥住宅の悲劇 

欠陥を隠す家づくり

家づくりのシステムは、大工さんの木工事を中心として、きわめて複雑な分業によって行われています。多くの異なった技能者が集まって一つのものを完成するという点では、家づくりと映画作りのシステムはよく似ているといえます。 しかし、家づくりは映画作りにはない難しさがあります。

簡単に説明すると、家づくりと映画作りの基本的な違いは、工程の積み重ね方の違いにあります。映画作りは撮影、録音、編集などの各工程は独立して行われ、各工程を組み合わせることで最終的な作品に仕上がります。このため、各工程で起こったミスが他の工程に与える影響はそれほど決定的ではなく、工程間の調節や修復によって補完しあうことも可能です。これに対し、家づくりの工程は、工程の上に工程を積み重ねる方法ですから、工程が進むにつれて、前の工程が隠れる特徴をもっています。
竣工検査で何一つ問題が見つからない、完全な出来栄えと判断された家でも、基礎や構造、雨じまいなど、完成後隠れてしまって見ることのできない部分に欠陥がある場合が多々あり、えてして、深刻なトラブルに発展するケースのほとんどは、隠された工程における工事ミスが原因で起こっています。逆にいえば、誰の目にも発見することができる工事ミスには深刻なものは少なく、直すのも簡単で、修復費用もそれほどかかりません。しかし、現在、法廷で争われているような重大な欠陥住宅の大部分は、目に見えない部分の工事ミスによって引き起こされたものがほとんどです。工事ミスの原因が故意によるものか不注意によるものかは別として、ミスに気づかず工事を進めてしまうと、そのミスが隠されてしまい、誰も気づかないままに家が完成するという事態に立ち至ってしまうのです。

工事のミスを防ぐために、工事現場を監督する現場監督がいますが、彼らは四六時中現場に張り付いているわけではなく、いくつかの現場を掛け持ちで見ているケースがほとんどです。そして、現場監督は施工スケジュールに遅れが出ると、それを取り戻すために、つい無理を承知で工事を急がせます。現場監督の重要な任務の一つとして工事を時間内に仕上げるというノルマがあるからです。しかし、どんなに順調に見える現場にも、スケジュール通りに工事が進まない原因は山ほどあります。天候不順や資材調達の不手際、出入りするたくさんの職人たちにもそれぞれ都合があります。とにかく、家づくりの現場は、いつミスが起こっても不思議ではない原因に満ちているのです。



欠陥住宅が生まれるメカニズム

まず、ミスが生まれるメカニズムを考えてみましょう。一軒の家が完成するまでには実にたくさんの人間がかかわり、ピラミッドをつくるように一つ一つの工程を下から順番に積み上げていきます。しかも、リハーサルややり直しが許されない現場での一回限りのぶっつけ本番ですから、ちょっとした行き違いが取り返しのつかないミスに結びつく可能性を常にはらんでいます。以下、具体的な家づくりの工程を追いながらミスの発生原因をみていくことにします。

家づくりの第一歩は基礎工事から始まります。地盤調査の結果によっては、基礎工事の前に杭工事や地盤改良工事などの工事の必要がありますが(154頁参照)、ここでは基礎工事から考えていくことにします。基礎工事とは土を掘って基礎底を作り、その上にコンクリートを立ち上げる工事をいいますが、土を掘ったり、その底に石を敷き詰めたり、コンクリートの芯となる鉄筋を組んだりするのもすべて人の手によって行われます。現在ではユニットとして製品になっているものもありますが、曲がりの部分や鉄筋を切ったり張ったりする部分は、現場で調整しなければなりません。それらがすべて完了すると、実際にコンクリートを流し込み、基礎が完成します。

1000分の5の水平レベルの狂いが問題となる家づくりにあって、この基礎工事における各工程ですべての手作業を1000分の1ないし1000分の2の精度で仕上げるためには、よほどの熟練と集中力を必要とすることは容易に想像がつくでしょう。

次に建物の構造となる柱、梁などを組み上げ、家の骨格を築きます。この構造部分は、昔は棟梁 が材料を見極め、材の癖をみて使う場所を決め、仕口〔木材と木材を交互に交叉させる部分のつなぎ手〕の加工を施していました。現在でも同じやり方で施工しているところもありますが、近年はプレカットという工場加工で行う場合が多くなっています。それでも、実際に現場で組み上げるときは人の手により組み上げていきます。一軒の標準的な家をつくるためには約20m3の材木が必要とされますが、土台、柱、梁、根太などすべての材木の寸法を寸分も狂わせずに組み立てるのは非常に高度な技術を要します。欠陥住宅で問題となる工事事例で、柱の寸法が合わず柱が宙ぶらりんになっているのをよく見かけますが、数千点の構造パーツのうち、たった一つが不備でもこうした問題が起こる可能性があるのです。

構造が組み上がると、大工さんを初めさまざまな業種の職人が出入りし、現場での施工が始まります。この段階になると工事はさらに複雑となり、段取りの不手際、職人間の連絡不十分、現場監督の見落としなど、至る所にミスの原因が転がっています。一見、のんびりと進んでいるように見える家づくりの工事現場ですが、内実はいつミスが起こっても不思議ではない綱渡りのような作業が行われているのです。世間を騒がせている欠陥住宅も、小さなミスを見過ごすか、あるいはミスへの対応をうっかり怠ったことで起こる、いわゆる「うっかりミス」が欠陥住宅につながるケースが、90%以上を占めているとみられています。悪意(故意)のミスについては断じて許されませんが、うっかりミスは、人為的な努力で予防することができます。第三章で詳しく述べますが、私たちが提案している施工検査システムは、施工現場に第三者の目を入れることでうっかりミスに歯止めをかけることを狙いとしています。


施工ミスはどうして起こる?

うっかりミスがどのように起こるのか、実際に起こったミスの事例を紹介します。埼玉県のN邸で起こったミスで、設計図面と実際の現場での違いを見過ごしてしまった例です。

普通、現場で最初に行う仕事は、建物の位置を明確にする「遣り方」という作業です。建築現場に杭を打ち、板で建物全体を囲っているのをよく見かけると思いますが、あれが遣り方です。この作業は、設計図面を基に行われますが、現場監督と棟梁、鳶などが設計図面通りに現場に落としこんでいきます。ここで建物配置を決めていくのですが、N邸の現場は敷地の境界ラインが少し複雑だったので、まず敷地境界を確認する作業を行いました。しかし、一カ所だけ、隣地との境界杭を建設地の杭と勘違いしてしまったために建物の位置が設計図面よりずれて、敷地境界線ぎりぎりに建物が建ってしまいました。建物の上棟式が終わった後に施主がそのことに気づき、すぐに対応策を練らなければならなくなりましたが、敷地からはみ出していないことが不幸中の幸いで、隣地の人と話し合い、法的にも問題ない形で工事は進みました。

遣り方の作業を当事者全員で行ったので、まさか間違いがあるとは思いもせずに工事を進めたことが、ミスを見過ごしてしまった最大の理由です。

実際には工事着工の第一段階として、地縄というロープや紐を地面の上に建物の大きさに合わせて張りめぐらし、工事管理者や施主立ち会いのもとに全体配置や車庫の寸法などを確認した上で着工します。ここでは、その確認を怠ったことも大きな原因といえるでしょう。

このように、大勢の人が立ち会っていてもうっかりミスは起こります。経験のあるベテランでも過信からくる油断や見過ごしはあり、力量の違う者同士が混在する現場では思い違いなどもミスを招く原因になっています。とくに、工事途中の設計変更はミスを誘発する原因になります。

施工途中での変更を防ぐためには、着工前の設計段階での打ち合わせを綿密に行うことに尽きますが、それでも変更したくなるのが人情です。どんなに綿密に事前の打ち合わせをしても、いざ現場がスタートし、家の形が見え始めると、つい欲が出てきます。一生一代の大事業ですから、それをダメというのは酷というものでしょう。しかし、思いつくままやたらに変更を行うことは感心できません。一つの変更が、多くの仕事に影響を与え、ひいてはミスを生む原因となるのです。

変更を申し入れた段階で、中にはすでに完了している工事もあれば、これから作業する工事もあります。それらすべてに対してやり直しや変更の手続きをしていくことになるので、どこかで伝達ミスがあったり、変更の内容が間違って職人に伝えられたりすれば、それがミスに繋がってしまいます。施主の責任でうっかりミスが起こることも十分にあるということを考慮しながら変更を行うことが必要です。


あいまいな管理責任

うっかりミスを防ぐためには、各工程でのしっかりした管理が必要とされます。現場で行う管理には、工程管理、品質管理、施工監理、安全管理、コスト管理、設計監理などがあり、それぞれに責任者がついています。法的には一定の規模や構造によって有資格者の管理が必要になりますが、ここでは一般的に行われている住宅建築について述べていきます。

まずは工程管理ですが、これは読んで字のごとく工事期間の工程全体を管理することです。着工時点から竣工に向けて工事の段取りを行い、契約書にしたがって引き渡しをできるように工事を進めます。施工中の天候や職人の段取りによる遅れを出さないようにすることが役割で、現場監督が一番気をつかう管理です。

現場監督は、契約書どおり完成させるために工事を進めますが、たいていの場合遅れがちになります。この遅れを取り戻すために、無理に職人を増やしたり、養生期間〔コンクリートなどが固まる期間〕を短めにしたりしますが、これがミスの発生する原因となります。たとえば、三日かかる工事に対し二日しか時間が与えられなければ、きちんとした工事ができるわけがないし、同じ現場に一度に多くの職人を入れても、お互いに邪魔をして仕事がはかどるどころか、かえって仕事の効率を落とすことにもなります。また、工事が遅れている現場では、現場監督自ら現場片付けを行ったり、作業の手伝いをしたりしているため、実際に見なければならない部分に目が届かず、ミスを見逃すこともあります。

次に品質管理は、現場で使用する材料をはじめ、全体の品質をチェックすることです。一軒の家を建築するために必要な資材は一万点にも及ぶといわれ、これらすべてを確認することは不可能ですが、ポイントを押さえることで品質管理を行います。現場に搬入してきた資材を、職人さんがチェックしてから使用すればよいのですが、与えられたものをチェックせずにそのまま取り付けてしまうのが現状のようです。棟梁が現場を取り仕切っていた時代には、棟梁が責任をもってチェックしながら施工していたのですが、現状では現場監督がチェックしなければなりません。現場に搬入されてから使用するまでのわずかな時間の中でチェックすることを怠れば、これもまたミスを起こす原因となります。

次の施工管理は、建物のグレードを決定する施工基準を管理します。いくらよい材料を使用しても、取り付け方にミスがあったり、下地にミスがあったりすれば、あるべき性能を発揮できません。たとえば、構造耐力を上げようとして構造用合板を使用する場合、それを取り付ける釘やビスが適正でも、間隔が適正でなければ構造耐力は上がりません。また、近年話題となっている断熱方法についても、内断熱と外断熱という形で比較されていますが、どちらを選ぶにしても取り付け方法次第で断熱性能が得られないだけでなく、結露などの問題も発生します(152頁参照)。

施工管理は、直接性能にかかわるので、十分な注意が必要です。とくに後からでは見えなくなる部分や構造的に重要な部分について、どういう管理を行っているかを施工会社に対して確認しておいた方がよいでしょう。
安全管理というのは、現場での事故防止を目的とした管理です。現場に携わる職人さんはもとより、近隣の第三者に対しても損害を防止するために、日々心がけておくものです。安全管理自体、建物に直接関係はしませんが、施工中に事故があったりすれば、気分的によいものではありませんし、その損害によっては、施工会社の経営に影響がでる場合も考えられるので、保険などが完備されている施工会社(五四頁参照)のほうが安心できるでしょう。

コスト管理とは、その建物にかかる発注金額を管理することです。会社にとっては大事なことであり、現場担当者の評価にもかかわってくることですが、あまりにも抑えすぎたり、手直し費用等を払わなかったりすると、手抜き工事の原因になりますので注意が必要です。

最後の設計監理は、現場が設計図面どおりの施工をされているかどうかをチェックします。建築家が設計した建物は、その建築家が設計監理まで行うことがよくありますが、この場合、設計図面に表現しきれない部分を施工中に指示したり、場合によっては変更を指示したりするために行っていることが多いようです。

以上のような管理を行いながら現場の作業は進んでいきますが、責任についてはそれぞれの管理者が負うことになります。しかし、住宅建設の場合、実際にはそれぞれが分業ではなく、現場監督一人ですべてを受け持っている場合がほとんどです。現場監督は管理者でありながら同時に現場の当事者でもあることが多く、それでは客観的な立場で現場を管理監督することはほぼ不可能です。企業として施工を請負っていれば最終責任は企業の代表者にありますが、それは建前で、実際に日々現場で起こるミスを防ぐための責任体制はきわめてあいまいというのが、日本の家づくりの現状です。


現場責任者の不在

かつての棟梁といわれた人たちは、職人である前に営業担当者であり、設計担当者であり、また、現場監督として現場のすべてを把握し、よい家をつくることを己の信条にしていました。なによりも、彼らは自分の現場に対して誇りをもって接していたので、工事に手を抜くなどということはありえない話でした。大工仕事ばかりでなく、左官、屋根職、建具、経師など、家づくりにかかわるあらゆることを自分の仕事として責任を持ち、施主に対していい仕事を納めることを使命と心得ている人たちでした。したがって、施主は棟梁を見てさえいれば家づくりがどんなふうに進むか、安心していられたのです。

 ところが今はどうでしょう。営業担当者は契約を取ることだけを考え、契約を取れば後は知らないとなり、設計担当者はデスクにかじりつき図面を期日までに仕上げることに熱中し、現場担当者は、とにもかくにも契約工期内に工事を完了し引き渡すことを至上命題としています。分業システムが理想的に機能すれば作業効率が高くなり、かつ、専門化による質の向上が期待できるはずですが、家づくりにともなうトラブルが続出している現状は、無責任体制という分業化の悪い面が露呈していると思えてなりません。

 具体的に家づくりの現場を見てみましょう。普通、施工会社は現場担当者(一般に現場監督といわれています)を置いて、施工中の各種管理を行わせています。しかし、多くの場合この担当者は入社歴二、三年の駆け出し社員や、場合によっては入社したての新入社員といったあまり経験のない社員を当てるケースが多いようです。こうなると、現場責任者とは名ばかりで、施工に対して全責任を負うことなどできるはずがありません。現場責任者については法的にもあいまいで、一定規模以上の建設でない場合、責任者に対する資格、配置義務などは明確にされていません。

 施工の現場には、いろいろな職人が出入りして作業を行うので、これを束ねる責任者がリーダーシップを発揮しなければ、それこそ無責任のデパートになってしまいます。しかし、実際には一人の現場責任者は同時に五、六棟の現場を担当していて、四六時中一つの現場に集中しているわけではありません。現場責任者が不在の現場では、職人たちは図面だけを頼りに作業し、図面に出てない部分は経験と勘に頼らざるをえません。そうなると、現場監督より経験豊富な職人が施工する場合に起こりがちな過信と思い込みによるミスを、誰も防ぐことができなくなります。

 これでは、責任者を置いているからといって安心できません。分業化を進め、各セクションに責任者を配置し、一見責任体制がしっかりしていそうに見えますが、裏を返せば責任の分散であり、リスクの分散を図っているのです。棟梁が高いレベルで全責任を負っていたのとは大違いです(表1)。

 分業化は近代経営の成果かもしれませんが、こと家づくりに関してはそれほど優れたシステムにはなっていないようです。第三章の「第三者契約のすすめ」でも触れますが、これからの施工請負契約に当たっては、契約の当事者として現場の管理責任者を明示することを提案しているのもそのためです。


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