関西・東海・九州支部 活動ブログ

全国の会員が日々の相談・検査・設計・研究などの活動から皆さまに役立つ事例、家づくりに関する地域の情報、社会情勢ニュースに対する専門家としての意見などを発信していきます。

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断熱材  ~その意味を考える~

 この写真は屋根面への発泡ウレタン吹付断熱材の施工写真です。



 先に直径150mmのアルミ製フレキシブルダクトを取り付けたために、

断熱施工業者がそのままダクトを埋め込むように発泡ウレタンを吹き付けてしまったようです。



 監督さんのチェックがなされていなかった現場といえます。



 断熱材は基本的に外気に面する部位に施工しなければいけません。

このダクトがあることにより、最も熱負荷がかかる屋根面の断熱欠損となっています。



 このまま天井の石こうボードを貼ってしまえば、

断熱材施工不良部分は隠され、分からなくなってしまいます。



 現場のチェックにおいて大切なことは、

その時、そのタイミングでないと確認出来ないことがあることです。



 また、キッチンのレンジフードの排気ダクトだったので、

冬場には料理から出る温かい湯気を排気するとダクト内で外気に冷やされ、

結露が発生し、レンジフードから水滴がぽたぽたと流れ出る可能性もあります。



 以上のようなことを現場で説明をすると、

イエンゴに検査を依頼された方から、施工業者さんへ改善の指示を出され、

一旦ダクトを外し、正しく断熱材を施工し直し、

本来あるべき姿に是正をされました。



 イエンゴでは、現場検査の際には、依頼者の方に立ち合いをお願いしています。



 今回の様な場合も現場で検査結果の説明を行い、また是正の指示もその場で

出せますので、施工中のロスタイムも少なく現場の改善が出来ます。



 施工中の現場には、第三者の目が大切なのがお分かり頂けるかと思います。


関西:鉢嶺 民雄


窓がないトイレ ~ほんとにいいの?~

 マンションでは角住戸でない限り、両側はお隣と分厚いコンクリートの壁で仕切られている。

 部屋のレイアウト上、居室が優先され、トイレや浴室はどうしても真ん中の方へ追いやられ、窓のないものになってしまう。

 これは、マンションの致し方ない宿命的なところです。

 ところがどうだろう最近、誰が流行らせたのか、

自由に設計できるはずの一戸建て注文住宅でも窓のないトイレや

浴室が度々見られるようになってきた。

 ここ数年現場検査に行って特に感じることです。

マンション住まいに慣れた方は、違和感がないのだろうか?

普段設計に携わるものとしては、全く考えにくいことです。

 現場で関係者に色々聞き合わせると、

・トイレ、浴室に窓を付けると追加になります。

・窓が無い方が冬場寒くないですよ。

・換気扇を付けていますので大丈夫ですよ。

等々の都合のいい説明でお客さんを納得させているようです。


 今や窓が付いていないのが標準仕様となっているのか?

トイレや浴室を窓なしにすればプランニング(間取り)が楽に出来ます。

現場だけではなく、設計においても手抜きを始めたのか!?


 休日の昼間に入るお風呂。

光が差し込み、リラックスして気持ち良く湯船につかる。

勿論、窓があるので換気も良く出来ます。

トイレにしても同じです。


 窓が無いと昼間でも電気(照明)を点けなければいけない。

換気扇だけでは臭いも抜けにくい等々・・・・・。


 トイレやお風呂の水回りは、換気・採光・居心地に重きを置き、気持ちよく使いたいものです。

トイレ・浴室こそいつもきれいに清潔にしたいものです。

やはりトイレには、窓があるべきでは?

関西:鉢嶺 民雄


捨てコン ~捨ててはいけません、必要です。~  

基礎工事において鉄筋を組む前に行う地業(ちぎょう)工事。

指定の深さまで土をすき取ったところに砕石を入れ、突き固める。

そして湿気が上がってこないように防湿シートを全面に覆い被せる。



本来ならその上に捨てコンクリートといわれる厚さ5センチほどの

コンクリートを流し込み固める。略して「捨てコン」といいます。

そうすることにより、捨てコンの上に墨を打ち、基礎の通りを正確に出せます。

また、コンクリートの被り厚さの6センチもキッチリと確保できます。

この捨てコンがないと、防湿ビニールに直接墨を打ったり、

被り厚さが正確に確保できなかったりするのです。



写真のように作業員の体重によりスペーサーがめり込み、

必要な被り厚さ6センチの確保できていません。

大手ハウスメーカーでは、少しでも原価を抑えようと、

外周部(外壁の下)だけに捨てコンを打設し、

内部は捨てコンを省略している現場を多く見掛けます。

基礎の検査に行くたびに、現場監督や職人さんに

「捨てコンが無いと墨も打ちにくいでしょう?」

「施工精度も良くならないでしょう?」

「施工能率も上がらないでしょう?」と伺うと、

全員が口をそろえて、

「実は、そ~なんですよ、でも会社が決めていることなので・・・・・」

将来にわたり長持ちするいい家を造るためには見えないところを

キッチリと施工することが肝心です。



お客さんの為といいながら、お客さんのためにならない施工は如何なものか。

皮一枚、仕上の見た目ばかり、素人受けの家づくりはもうやめた方が良い。



昔から行われている施工材料や施工方法、施工範囲には理由や意味があるのです。

名称は捨てコンですが、「捨てコン」は決して捨てるべきではありません。

いい家づくりには、絶対必要なのです。



関西:鉢嶺 民雄



違法コンクリートブロック擁壁(土留め壁)

  写真は小規模の分譲地において見かけた擁壁です。

 高さはブロックの段数からして約1.9m。

 建築の法律的には確かに工作物の申請の必要外の擁壁ですが、水抜き穴も無く、控え壁も無いコンクリートブロックの擁壁で造られている状況です。


 この写真は、歩道側のみですが、奥に隣地駐車場との境面にも同じような状況で築造されて、地震が起きた時には倒壊の危険が有り、歩道を歩く人に影響を及ぼす可能性が高いです。また、地震が無いにしても年数が経てば徐々に傾くなり膨らむなり危険をはらんでいます。

 
 地震が有れば自然災害ということで瑕疵や保証はないと考えていると思われますし、無くても10年過ぎれば瑕疵の対象から外れると考えているかと思います。

 地震国日本において、こんな危険な擁壁を施工する業者の感覚を疑います。

東海:神谷 一吉


床合板 ~畳からの発想~

 木造住宅において壁は筋違(すじかい)を入れたり、合板を貼ったりすることで耐力壁となり、

地震や台風に抵抗することは良く知られていますが、床も構造的には一役買っているのです。


 壁が鉛直方向の構成に対して床は水平方向に構面を造り、外力に抵抗するのです。

厚さ24mmや28mmの構造用床合板が使われることが多くその施工の方法、張り方があるのです。

通称千鳥貼り(ちどりばり)といわれ、継ぎ目が十の字にならないように貼ると

全体が1枚ものとなり合板がずれにくく、力を発揮するのです。


 これは、屋根面も同じことです。

元を正せば、実は日本の伝統的な畳の敷き方からヒントを得ているのです。

合わせ目が十字になるように畳を敷くと、力が掛かった時にずれやすく、畳自体のもちも良くない。

十字にならないようにT字に敷詰めるとずれにくく、長持ちをする。

美観的にも美しく、実利を伴った方法なのです。


 また、合板が規格品であるかどうかは、ホルムアルデヒドの放散量や材寸等々の記入と

日本農林規格(JAS)の刻印がされ、認定品の確認ができるようになっています。


 現場に行かれた際には、一度注意深く観察して見て下さい。


関西:鉢嶺 民雄