日々イエンゴ

全国の会員が日々の相談・検査・設計・研究などの活動から皆さまに役立つ事例、家づくりに関する地域の情報、社会情勢ニュースに対する専門家としての意見などを発信していきます。

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技術を磨く場の減少

 工場生産での大量生産は、良質なものを安価に求めることのできる社会を実現させ、それにより人々の生活は飛躍的に便利になりました。

 住宅産業で言えば、工場生産パーツで組み立てる家づくりの一部がそうかもしれません。

 材料は繊維板や成型板などの人工建材(=新建材)を使うため、収縮やねじれがなく加工が容易で、施工時間も従来より大幅短縮は出来ます。

 しかし建主さんが材料に天然無垢材を使用したい、壁は塗り壁にしたい、建具や家具を特注で造りたい、本格和室も欲しいなどと思われたら、新建材を多用する一部の住宅では対応が困難な可能性があると思います。

 そういった依頼にも対応できる職人さんの存在が必要です。
 
 良い素材材料を用いて設計されても、それを形にする大工さんの腕技術が低くければ、見た目で粗が目立つでしょうし、耐久性も落ちてしまいます。

 例えば無垢の木は、性質による収縮やねじれも考慮しながら加工をしなければなりませんので、性質を見抜く目も必要でしょう。

 今は大工さんの人口自体が減少している現状です。併せて、新建材を多用する住宅の需要増加を踏まえると、その希少な大工さんが技術を磨く場も減少していると思います。

 巾木(はばき)の出入り隅の造り方を見ても、樹脂製のキャップを両面テープで留めて仕上げている住宅と、材を45°斜めに切ってピタッと角を造り仕上げているのでは、見た目の気持ち良さと耐久性が違います。



関東:石川 克茂


違法コンクリートブロック擁壁(土留め壁)

  写真は小規模の分譲地において見かけた擁壁です。

 高さはブロックの段数からして約1.9m。

 建築の法律的には確かに工作物の申請の必要外の擁壁ですが、水抜き穴も無く、控え壁も無いコンクリートブロックの擁壁で造られている状況です。


 この写真は、歩道側のみですが、奥に隣地駐車場との境面にも同じような状況で築造されて、地震が起きた時には倒壊の危険が有り、歩道を歩く人に影響を及ぼす可能性が高いです。また、地震が無いにしても年数が経てば徐々に傾くなり膨らむなり危険をはらんでいます。

 
 地震が有れば自然災害ということで瑕疵や保証はないと考えていると思われますし、無くても10年過ぎれば瑕疵の対象から外れると考えているかと思います。

 地震国日本において、こんな危険な擁壁を施工する業者の感覚を疑います。

東海:神谷 一吉


ホームサバイバル


 災害が起きたとき、行政が一人ひとりを助けに行くことは不可能でしょう。

 自分自身で命は守らなくてはなりません。
 
 災害時には様々なストレスが重なります。
 
 実際に災害時に亡くなる人は 避難所での生活などでの二次災害が多くを占めます。
 
 そのためには 避難場所となる自分を守る住宅の整備が必要になります。

 在宅避難のためには、防災グッズ、家具の転倒防止固定化、耐震などがありますが、

 実際に防災時を想定してライフラインを遮断して体験することが 推奨されています。

北海道:今井 正樹


中古住宅購入のポイント

 日本は諸外国に比べ、中古住宅に対する評価が非常に低いと言われています。中古と言われると「古くて汚い」という印象を持っている方が多いのですが、コロナ禍により在宅ワークやDIYなど、生活スタイルの変化により中古住宅へ目を向けられる方が多くなってきています。


 そこで、中古住宅を購入する際の注意点をご紹介します。

 中古住宅と一言で言っても立地条件、築年数や構造、工法、性能など様々ですので、検討する際には十分注意しなければいけません。

 以下のポイントを見逃すと、余計な出費が掛かる場合も出てきますので注意してください。

① 構造的に問題無いか
当り前ですが、建物の基本となる構造がしっかりしていなければ長く住むことはできません。

基礎や外壁に大きなヒビがある場合、また、窓やドアなどを開け閉めしたときに隙間が出ている場合、室内を歩くと傾きを感じる場合など、建物自体にゆがみがあると様々な現象が現れます。

② 雨漏り、水漏れは無いか
木造住宅の場合、柱や梁などの木材には「水」が天敵です。直接の水だけでなく湿気に対しても木材を腐らせる原因になったり、カビの発生による健康被害につながる場合も出てきます。

天井に雨染みの跡があったり、窓周りにシミが出ていたり、また、洗面所の床がふかふかする場合も注意してください。床下を確認できれば配管からの水漏れが発見できる場合もあります。

③ 建物のメンテナンスはされてきているか
建物は当然経年劣化が起こります。外壁や屋根、内部、水周り、設備機器など定期的にメンテンアスがされていないと、思わぬ出費につながります。売主に対し、メンテナンスの状況を確認したり、給湯器をはじめとする設備機器の製造年月日を確認することで交換時期を把握することができます。また、排水管の詰りについては、建物の外周部にある排水桝を開けて排水の流れ具合をみることも大切です。

 基本的なポイントとなりますが、建物本体だけでなく外周部やお隣との境界ラインなど、できるだけ多くの情報を確認してください。

 中古でも「リフォーム済み」となっている場合は、表面上はきれいになっていますので問題点を発見するのは難しくなります。

 イエンゴでは、専門家による中古住宅の購入診断も実施しています。専門家による診断を受けることで、購入への判断をしていただければ購入後のトラブルを回避することができます。

 中古住宅をご検討の際は、一度ご相談いただけると安心です。


理事長:植田 達二


床合板 ~畳からの発想~

 木造住宅において壁は筋違(すじかい)を入れたり、合板を貼ったりすることで耐力壁となり、

地震や台風に抵抗することは良く知られていますが、床も構造的には一役買っているのです。


 壁が鉛直方向の構成に対して床は水平方向に構面を造り、外力に抵抗するのです。

厚さ24mmや28mmの構造用床合板が使われることが多くその施工の方法、張り方があるのです。

通称千鳥貼り(ちどりばり)といわれ、継ぎ目が十の字にならないように貼ると

全体が1枚ものとなり合板がずれにくく、力を発揮するのです。


 これは、屋根面も同じことです。

元を正せば、実は日本の伝統的な畳の敷き方からヒントを得ているのです。

合わせ目が十字になるように畳を敷くと、力が掛かった時にずれやすく、畳自体のもちも良くない。

十字にならないようにT字に敷詰めるとずれにくく、長持ちをする。

美観的にも美しく、実利を伴った方法なのです。


 また、合板が規格品であるかどうかは、ホルムアルデヒドの放散量や材寸等々の記入と

日本農林規格(JAS)の刻印がされ、認定品の確認ができるようになっています。


 現場に行かれた際には、一度注意深く観察して見て下さい。


関西:鉢嶺 民雄