日々イエンゴ

全国の会員が日々の相談・検査・設計・研究などの活動から皆さまに役立つ事例、家づくりに関する地域の情報、社会情勢ニュースに対する専門家としての意見などを発信していきます。

地域の「職人技」と「素材」が、家づくりをまた元気にする

当会では「地域の、地域による、地域のための家づくり文化」を

「地の家」と呼んでいます。



姉妹NPOの地の家ネットでは、活動趣旨である「地の家八誓」に賛同する地域工務店により、

「地の家」を全国的な活動として展開しています。



地の家の復権は現在の家づくりが抱える矛盾の多くを解決するばかりでなく、

地方の自立や活性化を促す大きな力になると考えています。

言わば、「ハウスメーカーの家」とは異なる住まいづくりです。

家づくりの仕方がハウスメーカーとは異なるのはもちろんのこと、

地域工務店としての心意気や誠実さは、

その地域に暮らす方の住環境の安心に繋がると考えます。


私たちは地の家の復権を目指した活動を「地の家運動」と称し、

各地の工匠が連帯してその推進に取り組んでいます。



埼玉県でも当会が推奨している建設会社がありますので、

お話をお聞きに行っても良いかと思います。

地域と共に存在している建設会社で、真面目で確かな家づくりが特徴です。



また当会ではさいたま市や久喜市で相談会を実施しています。どうぞご利用ください。





関東:石川 克茂


樹齢

会津若松 鶴ヶ城の北側入口近くにアドリアと言う喫茶店があります。

そこに飾られている欅の一枚板は幅2.2m厚さ22cm高さ5.4m

樹齢は800余年です。

奈良の室生寺の近くの水分神社の御神木として天然記念物に指定された欅の木が

老化の為倒壊の恐れがあるとし、天然記念物を外し伐採されたそうです。

長さ2mもあるチェーンソーにより現場で2枚の板を切り出し入札により販売し、

倒木の費用にしたそうです。樹齢800余年と言うと弘法大師空海がおられた時代です。

もしかしたらこの木の下で空海も休まれたのかもしれないと思うとロマンを感じます。


名古屋城本丸御殿のある床の間の板は幅90cmの桑の一枚板です。

樹齢500年以上の桑の木、直径は1.2m以上でした。


とんでもない樹齢の木材がある一方、住宅に使われる木材は年々樹齢が下がってきています。

桧は50年、杉は50~60年が一般的になっています。

使われる木材がある一方で、その周りには手入れがされなかった為に使えない木材が

日本の山に有り余っています。山の1区画には一斉に植林されます。

その1区画が50年を経て成長すると南側の日当たりの良い場所の木と

北側の日の当たらない場所の木では成長に差が出ます。

直径は育ちが良ければ50cm悪ければ15cm程度。そのどれもが樹齢50年なのです。



奈良の北山では台杉と言うタルキ用の木材を生産しています。

台杉は通常3本セットで最上部の枝を残し全ての枝を切り落とし

60年をかけて直径10cm以下になるように木材を作っています。

かつては社寺仏閣や茶室のタルキの材料として重宝されましたが

需要が無くなり生産量は格段に減ってしまいました。


今、日本のウイスキーが有名になり各地にウイスキー醸造所が作られています。

そこで必要になるのがウイスキーを貯蔵熟成する樽です。

樽の材料はナラ材です。日本中でミズナラの争奪戦が始まっています。

ミズナラは広葉樹で雑木と言われています。

約20年で伐採が可能ですがあまり植林はされていません。

熊の被害が増える原因の一つがミズナラの身であるどんぐりの減少です。

ミズナラの減少は熊の被害と結びついているのかもしれません。


この頃少しずつ、山に活気が出てきている気がします。

それぞれの樹木に適正な樹齢がありうまく利用する事が大事です。

山の価値が復活し、山の仕事で生活ができるようになれば

日本の経済も変わるだろうと考えています。


東北:関 清


イエンゴ保証機構


 当会の姉妹NPOのイエンゴ保証機構の総会及び会議が開催されました。


 「消費者保護」の観点から、NPO法人として運営するための意見交換がなされました。


 イエンゴ保証機構が運営する「イエンゴ完成保証」は、

当会の施工者推奨事業を補完する事業として生まれました。



 当会が審査し推奨する業者が倒産などの理由で、

建築主から請負った住宅の工事を継続できなくなった場合、

建築主にご負担をかけずに残工事を完成し引渡すための金銭的な保証を担保する制度です。



 この制度に参加する施工者は建築主が拒否しない限り、

請負う全ての住宅の完成を保証することが義務付けられます。

多くの施工者が負担の重さから需要者への完成保証に躊躇している現状を見るとき、

皆物件、皆保証を原則とした本制度の存在は画期的なものと考えます。



 完成保証は、保証機構に加入する全請負者が連帯して保証債務の責任を負うことにより、

不必要な基金や運営費の無駄を省き、営利主義を廃した透明な事業運営により、

きわめて軽微な負担で建築主は完成保証の恩恵を受けることができるようになりました。



 この完成保証を利用するには登録施工者でなければなりませんので、

お近くの加入業者にお問い合わせください。


NPO法人 イエンゴ保証機構


和室の減少

 部屋の広さを示す際に昔から畳の枚数で表現します。

 間取り図では「洋室(6畳)」「洋室(約7帖)」とし、

和室ではない部屋も畳の枚数が大きさ(広さ)の単位です。



 昭和生まれの人は和室が自宅にあることが多く、畳敷きの部屋で生活したことがあったり、

馴染みがあるのでイメージが付きやすいと思いますが、

2000年以降生まれの方が家づくりをする際には、

イメージ出来ないなんてことになるかもしれません。

家の売買広告を見ても判るように、近年和室は減少しています。



 統計を拝見すると、1980年には9割の住宅で和室があり、

それに加え床の間も有りましたが、2008年には「和室なし」が増加傾向にあり、

床の間のある和室は2割を切っています。



 1980年には2階建て住宅の2階にも和室が有りましたが、2008年にはほぼ無くなっています。

和室は近い将来無くなってしまうのか、無くなってしまうとすればなぜなのか、

それとも設けたいけど何かの理由で断念しているのか。



 昭和レトロが若い世代に注目されている今の流行りのように、

伝統への憧憬として和室が注目·再評価される時に、

建売住宅やローコストハウスメーカーが造作している「和室風」にならないように、

技術面と建材面の継承は続けていかなければならないと思います。



当会姉妹NPO法人の「地の家ネット」では

伝統技術の継承を実践している工務店が参加しています。





関東:石川 克茂


山林環境もサステナブルであってほしい

 山林資源に恵まれた日本は、林業など家づくりを支える

地場産業の発展を促して、地域の繁栄に大きな役割を果たしてきました。




 古くから日本で行われてきたこの、地域の、地域による、地域のための

家づくり文化を私たちは「地の家」と呼び、家づくり文化の復権を目指しております。

当会は、地場産業の林業が活性化することも望んでいます。




 検査等で車で方々行くのですが、通った道路周辺の山林や里山に

ソーラーパネルが設置されているところを見かけます。

山林の斜面をわざわざ削ってまでソーラーパネルを並べて、

いわゆるメガソーラー発電所が出来ています。




 斜面下の家が危険に及んでしまわないか心配になるところもあります。

ただ放置しているだけのお金にならない山林を所有している地主さんが、

所有·管理にご苦労されているのは理解できます。




 しかし、山林につくったほうが低コストでソーラー事業が出来るという業者都合が理由で、

山林を選択するのは安易過ぎると思いますし、

他に開発済の放棄地のような場所はないものでしょうか。




 地面に太陽光が当たらなくなり、その下の土は栄養が不足し、

地中の生物は光合成が出来ないで死んでしまい、

周辺の生態系も壊されていく可能性もあるでしょう。




 また、パネルが老朽化で撤去が必要になった時、

あるいは発電企業が倒産してしまった時など、

その後に瓦礫の山として放置されることがないかも心配です。




 一度壊してしまった環境は回復するのに年月が掛かるので、

メガソーラー発電がサステナブルな良い発電方法であるのなら、

環境に対しても「サステナブル=持続可能」なものであってほしいと思います。

SDGs「15:陸の豊かさも守ろう」で森林伐採を警告しています。

やはり発電所は自然への負担が少ない方法で、

将来に“ツケ”を残さないものであってほしいものです。


関東:石川 克茂